経過報告

 野川で洪水対策として河床整備工事が行われています。東京都は、
 2011年度の工事から、スライドダウンという工法に変更しました。
 スライドダウンは、必要最低限は掘り下げるけれども、景観上も生物の
 生息環境上も良好な元の野川の状態に早く戻るようにしましょうという
 工法です。その後の経過を報告します。
 
従来の工法から「多自然川づくり」へ

【 現在の工法 】

【 落差工 】

【 従来の工法 】
 
現場材料で水際に寄石
・寄土、左右から地下水
が出ています

 
高水敷を下げることで
河床掘削は少なく、護岸
の根入れも浅くなりました

 
玉石を鎖でつなげたもの
を落差工の上流側に
並べます


 
出来上がりは河岸の
勾配がきつく、水辺に
近づきにくくなりました


高水敷(川原)の高さは
工事前と同じですが河床
を深く掘り下げました


野川自身の自然の営み
で復元し水生生物も
早く回復しました



護岸には雑割石を積み、
平場には自然石をはめ
ています


上流側は連結玉石、
下流側には護床ブロック
が入っています


現在は草も生えました
が、川が自然に動けず
直線的です

 

 護岸はコンクリートブロック、
土盛り、ブロックマット、
さらに土盛りしました


上流側                                                 下流側
 

( アボヘボやニワトコについては、こちら

工事状況と課題

2011年度

大正橋上流~
茶屋道橋下流
   

 当初、喜多見大橋までの予定でしたが、水道橋あたりの処理や、前年度
 部分とのすりつけ(落差工)に費用がかかるため、茶屋道橋までも行かない
 ことになりました。高水敷(河原)については、工事後に草が生えて元の
 景観に戻りやすいように玉石張り、護岸の角は丸く仕上げてあります。
 
 
2012年度

茶屋道橋下流~
喜多見大橋上流
 
 ポンポコが野川ガサガサで出入りしている近く、
 喜多見大橋の上流まで整備されました。工事中の
 排水により一旦壊れた水道橋~茶屋道橋の河床は
 工事後、再びスライドダウンに仕上げ直されました。
 
 
1303 仕上げ直し
 
2013年度

喜多見大橋上流
~中野田橋上流

 ポンポコの野川ガサガサ中心地での工事です。新たに階段が設置され、
 工事中も工事後も両岸から地下水が出ているのがよく見えました。ただ、
 上流から流されてきた礫が整備済み区間に堆積し、工事排水により下流側
 は工事後も水路のようになってしまいました。さらに礫で堰き止められた
 上流側はプール状態が数ヵ月続き、水が引いた後は悪臭も発生しました。


1404 両岸から地下水


1404 喜多見大橋上流
礫が流れを堰き止める



1404 喜多見大橋前後
水路のようになる



1406 喜多見大橋上流
水がたまりプール状態

 
 悪臭については、この後の整備区間でも同様に発生してしまいました。
 東京都は現在、この問題について課題検証中です。(2016.11.30)
 以下に状況を整理しました。

 河床形状と悪臭
 
2013年度

喜多見大橋上流
~中野田橋上流


1405 悪臭位置2ヵ所
 
 

1605 階段下が特に臭い
 

1605 アップで

 2014年12月 流れをよく
 するため左岸側に水路
 を掘ってもらったり、
 2015年8月 水質浄化に
 とセキショウ移植もしま
 したが、渇水期になると
 また悪臭がしていまい
 ました。

 
2014年度

中野田橋上流
~雁追橋上流
 

1503 悪臭位置
 

1505 場所は民家近く
 

1505 アップで

 -
 
2015年度

雁追橋上流
~中之橋上流

 
1608 悪臭位置
 

1608 苦情により洗浄
 

1608 洗浄後も悪臭

 -
課題解決に向けて 

2017年度
2018年度
2019年度
 
 2017年6月20日、野川沿いの喜多見中部町会・喜多見西部町会・ポンポコ
 の三者連名で、東京都河川部・第二建設事務所・世田谷区土木部あてに
 上記3カ所についての要望書を提出しました。(要望書 PDF

 要望事項
     ・ 堆積した土砂の固定化を早急に解消すること
     ・ 自然な水際を早急に復元すること



 3カ所のうち、中野田橋上流については、事後調査で東京都準絶滅危惧種
 のタンボコオロギが見つかっていることなどから2017年度の手直しは
 見送って様子を見ることになりました。他の2カ所については、年度内の
 手直しとなりましたが、天候の影響などで工事が遅れ、2018年4月に
 手直し工事が実施されました。



 手直し工事後の様子

 1.直後
 雁追橋上流は澪筋が直線的ですが覚東幹線吐口があるためやむを得ない
 と思われます。5月になると、どちらもまた護岸付近から茶色い地下水が
 にじみ出てきました。臭いはどうか、野川ガサガサで入った際に確認します。
 今後、この上に土砂が堆積したり草が生えたりすれば、見た目については
 改善する可能性もあり、しばらく様子を見たいと思います。(2018.5.12)

  
         1804 雁追橋上流               1804 喜多見大橋上流

 2.2~4カ月後
 6月と8月に川の中に入って確認したところ、護岸付近から茶色い地下水が
 出ているものの臭いはありませんでした。特に喜多見大橋付近の景観は
 格段に改善し、川の中には色々な種類の魚の群れが見えて、玉網を入れる
 とアユが獲れました。生きものにとっても良い環境になっているようです。
 (8月に川の中に入ったのは喜多見大橋付近のみです) 2018.8.26

  
         1808 雁追橋上流               1808 喜多見大橋上流

 3.1年後
 手直し工事から1年後の2019年4月21日、春の野川ガサガサで喜多見大橋
 付近の様子を確認しました。野川自身の力で変化しながら、水深の深いところ、
 浅いところ、ワンドや瀬もできました。川岸から出ていた赤い地下水と悪臭も
 無くなりました(次大夫堀公園取水口近くに悪臭箇所がありますが、工事とは
 無関係だと思われます)。雁追橋上流も問題ないようです。(2019.4.21)

  
        1904 喜多見大橋上流             1904 喜多見大橋下流

 4.台風と大雨の後
 手直し工事から1年半後の2019年10月26日に確認しました。記録的な大雨
 を伴い多摩川も氾濫した10月12日の台風19号、世田谷区でも大雨洪水警報
 が出た10月25日の直後です。①雁追橋上流は直線的な澪筋を保っています。
 ②中野田橋上流は手直しを見送り様子見している場所で相変わらず右岸側に
 土砂が堆積していますが、春にはコチドリが営巣し左岸側にヤナギも育ちました。
 ③喜多見大橋上流から④茶屋道橋上流は大雨ごとに変化しつつ自然な澪筋を
 保っています。上流から流されてきたのでしょうか、この日は特に中野田橋から
 喜多見大橋の間にカルガモの親子が何組もいました。

  
        ①1910 雁追橋上流               ②1910 中野田橋上流
  
       ③1910 喜多見大橋上流             ④1910 茶屋道橋上流

その他

野川の多自然
川づくりを考える
連絡会

 世田谷区内の野川で活動する、喜多見ポンポコ会議、野川とハケの森の会、
 せたがや野川の会、野鳥ボランティアの4団体と個人で構成しています。
 連絡会では、外来植物除去、工事区間から在来植物移植なども行っています。

 東京都の河床整備工事に対応するため2009年度に発足した連絡会は、
 2019年度で世田谷区内の工事が終了したため2019年度末で解散しました。

  連絡会ブログ(URL

ワークショップの内容はこちら
 


 





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